理学療法士における臨床推論とは?
臨床推論は「クリニカル・リーズニング」とも言われ、理学療法の醍醐味的なところです。
「病態を推測し、仮説に基づき最も適した介入を決定していく一連の心理的過程」
であるので、気づき・知識・経験が必要なところですね。
仮説の検証のために、常に鑑別と選択を繰り返しています。
理学療法士として成長していくためにも、
「先輩がどういう考えてその評価をしたのか?その治療法を選択したのか?」
を知ることは非常に大切。
どんどん質問をしていくべきところです。
理学療法・リハビリテーション(リハビリ)における一般的な臨床推論の流れ
- 生物、心理、社会モデルに基づくICFによる全体像の把握
- 動作を基軸とした症候障害学的な分析
- 根拠に基づく理学療法の選択(説明と同意)
- 課題指向型トレーニング(最近のトレンド)の適用
- チーム医療による介入
理学療法・リハビリテーション(リハビリ)における臨床推論の注意点
「仮説」を立てていく中で、同様に
「対立仮説」
を作る。自分の仮説と他の可能性を持っておくことも重要
対立仮説の立て方
- 第一仮説(一番可能性が高いと考えている仮説)の次に高確率と思われる要因
- 見過ごすと生命や重篤な機能不全に繋がるもの
- 治療方法が相反、または異なるもの
自分の仮説が
「間違っていない」
と思い込まないことが非常に重要です。
そのため、
- 主な課題
- 治療プログラム
- 到達目標
の3点を軸に、常に考えを巡らせることが重要です。
理学療法における疫学統計
整形外科的なテストにおいても、よく言われますが、
- 感度 :その中で、検査が陽性の割合
- 特異度:それ以外の中で、検査が陰性の割合
は覚えておきましょう。
例えば、
前十字靭帯損傷などで行う
「前方引き出しテスト」
感度が 55~90%
特異度が85~100%
と言われています。
つまり、
ACL損傷がある人に対して、55~90%の人が陽性となり、
ACL損傷がない人に対して、85~100%の人が陰性となる。
検査結果が出たからといって、100%ではありません。
そして、やる人によって、正確性は変わってきます。
*個人的な意見
しかし、検査自体はかなり有用です。
上記のような前方引き出しテストでは、
少なくとも「左右差」はわかりますし、
経過を追って、「緩くなった」「しっかりした」もわかります。
徒手検査 = 組織の損傷
と考えず、そういった傾向がある人、と考えて検査をしていきましょう。
理学療法における研究
ここでも研究について話をされていましたが、
再度研究についての講義でした。
そもそも、研究デザインには
- 実験研究 (原因と効果) RCT シングルケーススタディなど
- 探索研究 (関係性の発見)コホート研究 症例対照など
- 記述研究 (特定の記述) 記述調査 症例報告など
があり、上から順に信頼性が高いとされています。
流れとしては、
臨床上の疑問(クリニカルクエスチョン)から始まり、(第一段階)
研究視点から、リサーチクエスチェンへと変えていきます。(目的の明確化)
ここでは、臨床上の疑問をPECOの形へと変えていく作業をします
第一段階:疑問から仮説、研究計画
第二段階:データ集め(目的の明確化)、分析から解釈
第三段階:発表、論文としてまとめることで、さらに振り返える
統計的に有意な差と臨床的に有意味な差
これはイコールではありません。
MCID[minimally clinically important difference]
臨床的意義を見出せる最小限の指標の差
症例報告の研究生とシングルケーススタディ
シングルケースでも、研究に該当するものと、該当しないものがあるようです。
研究に該当する例
・単一症例でも、一定期間特定の運動療法を継続する場合
*必ず、生命倫理審査委員の承認が必要
シングルケーススタディの基本的なデザイン
- A-B-Aデザイン(withdrawal design) 基準期、介入期の後に撤回相
- A-B-A-Bデザイン(multiple-base line design)
- change-criterion design 介入期を細分化して段階的な介入を続ける
- alternating intervention design セッションを揃えて、異なる介入を行う
*研究上の注意**
同じ「背部痛」でも、
モビリティが足りないためか?
スタビリティが足りないためか?
で原因が異なる。それをしっかりと把握した上で、原因を分けてデザインする必要がある。
理学療法における臨床・疫学研究の倫理
「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」
「侵襲」という意味は、身体的だけでなく、
精神に傷害または負担が生じることを言う。
という一文があることに注目ですね。
協会としては、どんどん研究をすすめて、以下のような諸課題を解決していく必要があると考えているようです。
- 対象者の広がり
- 標準生
- 他職種との違い
- ビックデータ
- 海外展開
確かに、まだまだエビデンスが証明されていない「理学療法」
研究と臨床(学術と職能)を融合し、「理学療法を標準化」していかないと、
社会から認められなくなってしまう可能性も…否定はできません。